「ある日突然、胸が締めつけられるような激痛で倒れてそのまま…」
救命の現場では、そんな痛ましい事例に何度も直面します。
心筋梗塞は、前触れなく私たちの日常を奪う恐ろしい病気です。
しかし、心筋梗塞は「生活習慣病」の一つであり、日々のちょっとした意識と行動の積み重ねで、そのリスクを大幅に減らすことができます。
「将来、自分や家族が苦しまないために」
今日から始められる「心臓を守るための40の習慣」をまとめました。
一度にすべてを完璧にする必要はありません。できることから一つずつ、生活に取り入れてみてください。この積み重ねが、未来の命を守ります。
1. 食生活で心臓を守る10の習慣(栄養・水分)
血管を健康に保ち、血液をサラサラにするための食事の基本です。高血圧、脂質異常症、糖尿病の予防が、そのまま心筋梗塞予防につながります。
- 塩分は1日6g未満に抑える(高血圧予防の基本。減塩を意識しましょう)
- トランス脂肪酸を避ける(マーガリン、ショートニングを使った菓子パンや揚げ物などに注意)
- EPA・DHAを含む青魚を週2回以上食べる(アジ、サバ、イワシなど。血液をサラサラに)
- 食物繊維を1日20g以上とる(野菜、海藻、きのこ、豆類を積極的に。コレステロール排出を助けます)
- 野菜を毎食食べる(特に色の濃い緑黄色野菜を意識して摂りましょう)
- 肉より魚中心の食生活にする(肉の脂身は控えめにし、良質な脂質を魚から摂取)
- 果物を毎日適量に摂取する(ビタミン・ミネラル補給に。ただし糖分もあるため食べ過ぎには注意)
- 甘い清涼飲料水をやめる(急激な血糖値上昇は血管を傷つけ、動脈硬化のリスクを高めます)
- 過食を避ける、腹八分目(急な血圧・血糖上昇を防ぎ、内臓への負担を減らします)
- アルコールは適量に抑える(純アルコールで1日20g程度まで。ビール中瓶1本、日本酒1合が目安。休肝日も作りましょう)
2. 運動・生活習慣で予防する10の習慣
適度な運動は血管をしなやかにし、肥満を防ぎます。日常生活の中で体を動かす意識を持つことが大切です。
- 週150分以上の中強度の運動を続ける(早歩き、軽いジョギング、自転車など、少し汗ばむ程度の運動を習慣に)
- 毎日6,000歩以上歩く習慣をつける(まずは「今よりプラス10分多く歩く」ことから始めましょう)
- エレベーターより階段を使う(日常の小さな積み重ねが大きな差になります)
- 長時間座りっぱなしを避ける(1時間に1回は立ち上がり、軽く体を動かしましょう。エコノミークラス症候群予防にも)
- 自然光(朝日)を浴びる(体内時計を整え、睡眠の質を向上させます。ストレス軽減効果も)
- 体重をBMI 25未満に保つ(肥満は心臓への大きな負担となります。適正体重の維持を心がけて)
- 定期的に血圧・血糖・コレステロールを測定する(自分の体の「数値」を知り、変化に気づくことが重要です)
- 急激な温度変化を避ける(ヒートショック対策)(特に冬場の脱衣所やトイレ、熱いお風呂は要注意。高齢者や心臓病の既往がある方は徹底を)
- 禁煙する(喫煙者は心筋梗塞のリスクが非喫煙者の約2〜3倍になります。血管を守るための最重要項目です)
- ストレッチやヨガで血流を促す(体の柔軟性を高め、リラックスすることで血流が改善します)
3. 睡眠・ストレス管理で予防する10の習慣
心臓と自律神経は密接に関係しています。十分な休息とストレスケアは、心臓を休ませるために不可欠です。
- 毎日7~8時間の良質な睡眠を確保する(睡眠不足は交感神経を緊張させ、血圧を上げます)
- 就寝前2時間はスマホを控える(ブルーライトは脳を覚醒させ、睡眠の質を下げてしまいます)
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがあれば検査を受ける(大きないびきや日中の強い眠気は要注意。心臓に大きな負担をかけます)
- 日中の仮眠は20分以内にとどめる(長すぎる昼寝は夜の睡眠の質を下げることがあります。短時間の昼寝はリフレッシュに効果的)
- リラックスできる趣味をもつ(仕事や家事から離れ、心から楽しめる時間を作りましょう)
- 過労を避ける(長時間労働や慢性的な疲労の蓄積は、心疾患の重大なリスク要因です)
- 悩みを抱え込まず相談する習慣をもつ(精神的なストレスを一人で抱え込まないことが大切です)
- 毎日5分の瞑想や深呼吸を取り入れる(意識的にリラックスする時間を作り、自律神経を整えましょう)
- 感謝を伝える等のポジティブな感情を育む(前向きな感情はストレスホルモンを減らし、心臓の健康に良い影響を与えます)
- 怒りを我慢せず健康的に発散する方法を持つ(溜め込んだ怒りは血圧を急上昇させます。運動や趣味など、自分なりの発散方法を見つけましょう)
4. 医療・知識で予防する10の習慣
自分の体の状態を正しく知り、いざという時の対応を学んでおくことが、最後の砦となります。
- 年1回の健康診断を必ず受ける(自覚症状がない「サイレントキラー」な病気の芽を見つける唯一の機会です)
- 家族に心疾患の既往歴があれば医師に伝える(遺伝的な要因もリスクの一つです。問診時に必ず伝えましょう)
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症は放置しない(これらは動脈硬化を進行させる最大の原因です。適切な治療と管理が不可欠です)
- AEDの場所や営業時間を把握しておく(自宅や職場、よく行く場所の周辺で、どこにAEDがあるか確認しておきましょう)
- 心筋梗塞のサインを家族で共有しておく(「胸の痛み」「圧迫感」「息苦しさ」「冷や汗」など、典型的な症状を家族みんなが知っておくことが大切です)
- 「痛みのない心筋梗塞」があることを知る(高齢者や糖尿病患者では、胸痛がなく「息切れ」「だるさ」「吐き気」だけのこともあります)
- 緊急時の119番通報の流れを家族で確認しておく(いざという時は誰もがパニックになります。誰がどう動くか、話し合っておきましょう)
- 「違和感が最初のサイン」と意識する(激痛の前に、「なんとなく胸がおかしい」「いつもと違う」という前兆があることも多いです)
- 女性特有の症状(息切れ・吐き気・疲労感など)も知っておく(女性は男性よりも非典型的な症状が出やすい傾向があります)
- 自宅で救命講習を受けておく(家族のために)(胸骨圧迫(心臓マッサージ)やAEDの使い方を一度でも体験しておくと、いざという時に体が動きます)
まとめ
心筋梗塞は恐ろしい病気ですが、その多くは日々の生活習慣を見直すことで予防可能です。
これら40の習慣は、決して難しいことばかりではありません。
大切なのは、「自分の体を気遣う意識を持つこと」です。
まずは、今日できそうなことから一つ、始めてみませんか?
その小さな一歩が、あなたと、あなたの大切な家族の未来を守ることにつながります。
■ 注意事項
このページの内容は、心筋梗塞の予防に関する一般的なガイドラインに基づいた情報提供を目的としたものです。個人の健康状態や持病によって適切な対策は異なります。具体的な食事療法や運動療法を始める前には、必ずかかりつけの医師や専門家にご相談ください。
■ 参考文献
- 厚生労働省:日本人の食事摂取基準
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:虚血性心疾患
- 日本循環器学会・日本動脈硬化学会ほか:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
- 日本高血圧学会:高血圧治療ガイドライン2019
- 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団):心筋梗塞の予防