「地震だ! まずドアを開けて出口を確保しなきゃ!」
もしあなたがそう考えているなら、少し認識を改める必要があるかもしれません。
かつての防災訓練ではそのように教わることもありましたが、現在の防災常識では、必ずしもそれが正解とは限らないのです。
むしろ、思考停止で「まずドアへ」と動くことが、かえって命の危険を招くこともあります。
多くの災害現場に立ち会ってきた消防のプロの視点から、地震発生直後に「本当にやるべき行動」と、その優先順位について解説します。
■ なぜ「すぐドアを開ける」が危険なのか?
最大のリスクは、「大きな揺れの最中は、そもそもまともに動けない」という現実です。
震度6弱以上の激しい揺れの中では、立っていることすら困難になります。そんな状態で無理に玄関や窓へ移動しようとすると、以下のような深刻な危険にさらされます。
- 転倒して骨折や大ケガをする
- 棚や家電が倒れてきて下敷きになる
- 照明器具やガラスの破片などの落下物が直撃する
- 慌ててドアや壁に激突する
「出口確保」よりも、まずは「その場で命を守る」ことが何よりも優先されるべきなのです。
■ 地震発生直後「本当にやるべき」5つのステップ
地震が発生したその瞬間、生死を分けるのは正しい行動順序です。以下のステップを頭に入れておきましょう。
① 【最優先】まずは「身の安全」を守る
揺れを感じたら(緊急地震速報が鳴ったら)、何よりも先に自分の身を守ります。
無理に移動せず、その場で姿勢を低くし、クッションやカバンなどで頭を守りましょう。丈夫なテーブルの下に入れるなら入ります。キッチンなど危険な場所にいる場合は、できる範囲で安全な場所へ避難します。
ポイントは「揺れが収まるまで動かない」ことです。
② 揺れが収まってから「初期消火」
火を使っていた場合でも、揺れている最中に火を消しに行くのは危険です(やけどや転倒のリスク)。
最近のガスコンロは震度5相当以上の揺れで自動的に火が消える安全装置が付いています。
まずは身を守り、揺れが収まってから落ち着いて火の始末をしましょう。もし火災が発生して消火が難しい場合は、すぐに避難準備に移ります。
③ 出口の確保と避難経路の確認
揺れが完全に収まってから、初めて玄関や窓を開けて避難口を確保します。
扉が歪んで開かない場合に備え、他の避難ルート(別の窓やベランダなど)が塞がれていないかも確認しましょう。
④ 家の中の安全チェックと二次災害防止
避難する前に、以下のチェックを行い、通電火災やガス爆発などの二次災害を防ぎます。
- ガラスの破片や倒れた家具に注意して移動する
- ガス漏れがないか確認(臭いがしたらすぐに換気し、火気は厳禁)
- 避難する場合は、電気のブレーカーを落とす(通電火災防止)
⑤ 正しい情報に基づく「避難の判断」
テレビ、ラジオ、スマホなどで正確な情報を収集します。
建物に倒壊の危険がある場合や、火災が発生している場合はすぐに避難してください。
特に沿岸部で「津波警報・注意報」が出た場合は、揺れの大きさに関わらず、迷わず直ちに高台や避難ビルへ逃げてください。
■ 補足:「家の築年数」とドアが開かなくなるリスク
「ドアを開けなきゃ閉じ込められる」という危機感は、特に古い木造住宅で耐震性が低い場合に当てはまります。
1981年(昭和56年)6月以降に建てられた家は「新耐震基準」が適用されており、震度6強~7程度の地震でも倒壊しにくい設計になっています。昔の家に比べれば、建物が大きく歪んでドアが全く開かなくなるリスクは低くなっています。
もちろん絶対に開かなくならないとは限りませんが、「閉じ込められるリスク」よりも、「揺れている最中に無理に動いてケガをするリスク」の方が高いというのが、現代の防災の考え方です。
■ まとめ
地震発生直後の行動は、以下の原則を忘れないでください。
- 揺れている間は動かない。身の安全が最優先。
- 「火の始末」や「ドアを開ける」のは、揺れが収まってから冷静に。
いざという時にパニックにならないよう、日頃から正しい行動をイメージしておくことが大切です。
■ 注意事項
このページの内容は、一般的な防災知識に基づく情報提供を目的としたものです。地震の規模や建物の状況、周囲の環境によって適切な行動は異なります。最終的にはご自身の置かれた状況に合わせて、命を守るための最善の行動を判断してください。
■ 参考文献
- 気象庁:地震発生時の行動
- 東京消防庁:地震その時10のポイント
- 国土交通省:住宅・建築物の耐震化について(新耐震基準について)