職場の用事や身近なコミュニティに、瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にしてすぐ怒鳴る人、いませんか?
そんな人が近くにいると、いつ爆発するか分からず、常に緊張して心身が休まりませんよね。
「自分が悪いのかな」と萎縮してしまうかもしれません。
しかし、少し視点を変えてみましょう。
実は、医学的に見ると彼らは「怒るたびに自分自身の寿命を削っている人」でもあるのです。
激しい怒りは「本人」の命を縮めるリスクがある
あまり知られていませんが、激しい怒りの感情は、その人自身の体に大きな負担をかけます。
複数の研究によれば、激しく怒った直後の数時間は、以下のような健康リスクが高まることが報告されています。
- 心筋梗塞の発症リスクが数倍に増加(研究によっては最大8.5倍との報告も)
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリスクが増加
- 危険な不整脈のリスクが増加
これは、怒りによって交感神経が極度に興奮し、血圧の急上昇、心拍数の増加、血管の収縮、血液が固まりやすくなるなどの急激な変化が起こるためと考えられています。
もちろん、明らかに自分に非がある場合は反省と改善が必要です。
しかし、相手の怒りの多くが「理不尽」「ただの機嫌」「八つ当たり」「図星を突かれた逆ギレ」など、本来怒鳴る必要がないものであるなら、あなたがまともに受け止めて傷つき、追い詰められる必要はありません。
「ああ、この人は今、命がけで怒って、自分の体を痛めつけているんだな」と、心の中で冷静に距離を置く視点を持つことが大切です。
「あなたのため」という嘘を見抜く3つの基準
特に注意したいのは、単なる「感情の爆発」を、「指導」や「愛」といった言葉にすり替えてくるケースです。
これを見抜けないと、「私がダメだからだ」という不必要な罪悪感で心が削られてしまいます。
相手の怒りが「本物の指導」なのか、ただの「感情の発散(偽物)」なのかを見抜く3つの基準をご紹介します。
1. 「行動」を叱るか、「人格」を否定するか
- ○ 本物(指導):ミスした「行動」や「プロセス」だけを具体的に指摘する。「次はこうしよう」と未来の改善策を示す。
- × 偽物(発散):「お前はいつもダメだ」「根性が腐ってる」「使えない」など、相手の「人格」や「能力」そのものを否定する言葉を投げる。
2. 「対話」があるか、「一方通行」か
- ○ 本物(指導):「なぜそうなったと思う?」「こちらの伝え方も悪かったかな」と、相手の言い分を聞く余裕があり、解決のための「対話」が成立する。
- × 偽物(発散):「言い訳するな」「口答えするな」と相手の言葉を遮る。自分が一方的に喋ってスッキリしたいだけの「独演会」になっている。
3. 「感情」をコントロールできているか
- ○ 本物(指導):相手に理解してもらうために言葉を選んでおり、根底に「冷静さ」が残っている。
- × 偽物(発散):顔を真っ赤にして、声が荒く、言葉が乱暴。相手への伝達よりも、自分の「スッキリしたい」という感情(カテコラミンの暴走)が優先されている。
理不尽な怒りから心を守る「4つの護身術」
もし、相手の怒りが「偽物(ただの感情の発散)」だと判断したら、まともに受け止める必要は一切ありません。
あなたの心を守るために、以下の4つの行動を実行してください。
1. 観察モードに切り替える
相手の言葉を内容として全部受け取るのではなく、相手の状態を観察する「研究者」のような視点になりましょう。
「顔が赤いな」「早口になっているな」「唾が飛んでいるな」「今は興奮状態にあるんだな」と客観視することで、感情の渦に巻き込まれにくくなります。
2. 物理的に「現場」を離れる
人間の怒りのピークは、そう長くは続きません。
「すみません、トイレに行きます」「必要な資料を持ってきます」など、適当な理由をつけて、物理的にその場から離れてください。相手の視界から消えることが、最も強力な防御になります。
3. 心の中で距離を取る
前述した医学的リスクを思い出しましょう。
「この人は今、怒ることで自分の血管を痛めつけ、寿命を削っている」「感情の爆発で周りを巻き込んでいるかわいそうな人だ」と心の中で整理し、心理的な境界線を引きます。
4. 感情を乗せずに要点だけ返す
ムキになって反論するのも、過剰に謝罪しすぎるのも逆効果になることがあります。
「〇〇という点について怒っているんですね」「ご指摘の件、確認します」のように、感情を交えず、事実の要点だけを淡々とオウム返しのように返すと、相手は勢いを維持しにくくなります。
まとめ
怒りは多くの場合「相手自身の問題」であり、あなたの人間としての価値とは別物です。
他人の不機嫌のために、あなたの大切な心を犠牲にしないでください。
理不尽な怒りは、聞き流す勇気と、物理的・心理的に距離を取る行動が、あなたを守ります。
【重要】身の危険を感じたら
暴言や威圧が日常的に続く、物が飛んでくる、身の危険を感じるという場合は、上記のような個人の対処を超えています。迷わず周囲の信頼できる人、上司、人事、または専門の相談機関(ハラスメント相談窓口など)へ相談し、ご自身の安全確保を最優先にしてください。
■参考文献
- Mostofsky E, et al. Outbursts of anger as a trigger of acute cardiovascular events: a systematic review and meta-analysis. Eur Heart J. 2014;35(21):1404-10.
- Mittleman MA, et al. Triggering of acute myocardial infarction onset by episodes of anger. Determinants of Myocardial Infarction Onset Study Investigators. Circulation. 1995;92(7):1720-5.
- Möller J, et al. Relation of Outbursts of Anger and Risk of Acute Myocardial Infarction. Psychosomatic Medicine. 1999;61(6):861-867.